2003年9月28日日曜日

コンクリートジャングルの奇跡



今日の話はすごいっすよ。


私、今日外で飲んでいて清々しい朝を迎えてしまいました。明るくなる前に店の前に自転車止めて入ったんですけど、前カゴの中に赤いジャケットを入れておいたんですわ。そして朝のNHKニュースなぞ見ながら黄色い御来光を拝まさせてもらいました。


そうしていい気分で出てくるとカゴに入れてあったジャケットがない。ちょっとひんやりとした清々しい朝でしたので、どなたかがお持ちになったのであろうと考えました。ま、カゴにジャケット入れたまま飲みにに入るほうもアレですからね。ちょっとだけ酔いが覚めてバッドになりそうな予感でしたが、何とか家に辿り着いてすぐに寝てしまいました。


そうして日曜日、まとわりつく子供に睡眠をさたまげられつつ夕方になり、だいぶ調子も戻ってきたので子供と二人、歩いて近くの図書館に出かけました。本を返して次に聴きたいCDなどを物色し、何枚かと子供の絵本を借りて階段を二人して降りておりました。その時我々の横を赤いジャケットが通りすぎたのでした。


「マジ?!」


その赤いジャケットはまさに私のもの!下北の古着屋で買った私のジャケットと全く同じ刺繍が胸に入っているではありませんか!そこのスキンヘッドの中肉中背、労働者階級のおっさん!


「おじさん、ちょっと待ってよ。このジャケット、今朝取られた俺のジャケットにそっくりなんだけど、どこから持ってきたの?」


肩をかけつつ襟の裏側にあった落書きをチェックする。あった!間違いない。


「これか?息子が持ってきたんだよ。おりゃ知らねえよ。」


言葉遣いからしてあんまり強そうではないが体はがっしりしている。黒いシャツとスラックスでのコーデもちょっと怖そう。傍らでは息子が不思議そうな顔をして二人のやり取りを見ている。


「おじさん、じゃ、息子さんのところ行こうか。これ俺のジャケットだよ。」


「いや、息子はどこかいっちゃったよ。ちょっと引っ掛けただけなんだよ。おりゃ知らねえよ。」


「じゃさ、これもらってもいいかな。俺のジャケットだし。」


「あ、いいよ。これでいいんならいいよ。」


ジャケットのポケットからスニッカーズ数本(!)を取り出し、ジャケットを私に渡す。取られたジャケットが帰ってきた… こんなことがあるんだなあ、と呆然としていると、おっさんは前に歩いて行き、振り向いて一言。


「あって良かったなあ」


「俺のだよ!」つい声が大きくなる。


そのまま彼はタバコをふかしながら歩いていった。


息子と私はその後何事もなかったように家に帰った。


取られたジャケットは帰ってきた。


しかしどうも釈然としない。





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