2004年9月28日火曜日

やっと読み終わった ―戦争における「人殺し」の心理学―



戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)


長い本でしたがやっと読み終わりました。しかしこの本すごい!一家に一冊でしょう。


この本の最初の部分では人間が人間を殺す事に強烈な抵抗感を覚えること、そのために人間は戦争状態においてもできるだけ「殺すこと」を回避する傾向がある事が綴られています。


第二次世界大戦で、全兵士のうち発砲した兵士は15%しかいなかったそうです。


そしてその次に、それでは戦争に勝てないので、戦争においてその抵抗感を薄め、兵士が人間を殺すようになる訓練方法を編み出していったことが書かれています。パブロフの犬のように繰り返し訓練を行い、考えることなく反射で人を殺せるようにし、殺す相手は自分と同じ人間でないから殺してもよいのだ、と教育して罪悪感を薄めます。


ベトナム戦争での発砲率は95%に上がりました。


しかしその結果訓練によって「殺し」まではできましたが、その後に襲う強烈な抵抗感は訓練では消せず、大量の精神的被害者を出してしまいます。ベトナム復員兵の問題です。


最後に、現在の社会を取り巻く状況が語られます。ここが怖い。


現在のテレビや映画で繰り返される暴力描写、これを見続けることは兵士が人間を殺すようになる訓練過程とそっくりだと筆者は言います。これによって暴力、残虐行為への抵抗感がなくなり、簡単に暴力に訴えることができると。


「殺す」という行為を研究してこういう結論を導き出されると説得力があります。興味を持たれた方は是非御一読を。





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