2007年8月30日木曜日

マルコムX自伝



実は一週間以上ろくに音楽も聴かずこの本を読んでいました。私の今や人生の師、ピーター・バラカン様がラジオで「私の人生を変えた本」とおっしゃるものだからさあ大変。早速図書館で借りてきました。またこの本の装丁が素晴らしいではありませんか。読む前から血がたぎりますな。


マルコムX、名前は聞いたことがありましたが黒人でモスリムで公民権運動のときに何かした人、以外は何も知りませんでした。宣教師の家に生れて小さいときにその宣教師の父が白人に射殺され、母親もその後精神を病んで一家離散、彼は学級委員になれるほど勉強ができたのですが黒人、ということと家庭環境からハスラー(法律にとらわれない自由業、日本語で平たく言えばやくざかな)になってタフな人生をNYCのハーレムやボストンで送ります。空き巣で捕まるのですがその時に白人女性と付き合っていたことで刑が重くなり、刑務所に長く入ります。そこでイスラム教と出会い彼の人生は全く変わります。ものすごい量の読書を獄中でして教養をつけ、アメリカのモスリム指導者から直々に指導を受け、イスラム教ではなく「彼」に帰依してゆくのです。


そこからが面白いのですが長いのでやめましょう。自伝なので当たり前なのですが、彼の言葉で全てつづられているのがすごいです。彼の鉄のような信念に圧倒されます。命を狙われても、彼の思うところにまっすぐ進んでいくのです。彼が書く最後の章は圧巻です。彼は自分が長く生きられないことを自覚して文章を書いています。病気ではないのです!戦場でもないのです!ニューヨークのホテルの一室で。彼の主張は最後には「人間をお互い人間として認めようよ」というシンプルなものになりました。彼が生きてこの主張を広めていったら黒人の世界をはじめ今の世界は少し違った形になっていたのかもしれません。1965年2月21日に彼が40才で死んでからもう40年以上経ちます。40年でこの世界は住みやすくなったのでしょうか。


久しぶりに熱くなる、そういう本でした。


完訳マルコムX自伝 (上) (中公文庫―BIBLIO20世紀)


完訳マルコムX自伝 (下) (中公文庫―BIBLIO20世紀)





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