2010年3月30日火曜日

民間防衛 新装版―あらゆる危険から身をまもる / スイス政府 編



民間防衛―あらゆる危険から身をまもる


ううむ、これ読んでスイスはすごい国だなあ、と思った。スイスを守るためにここまでの指導が国民にされていた(いる、ではない。ここ重要)とは。


スイスの旗の赤色は、スイス人が流してきた血の色なんだな、と。大した産業もなく、周りの列強から蹂躙される歴史があったのだろう。傭兵となって敵味方に分かれて戦った歴史もあったらしい。それらの歴史から、彼らは永世武装中立という政体を作り上げた。日本は非武装中立ね。建前だけど。その永世武装中立というスイスをどうやってスイス国民は守るのか。それが書いてある。


具体的に戦争(武力行使)が通るプロセス、そしてそれが国民生活に与える影響、その影響を最小化する準備や方法、また核兵器が使われた時の対処のしかたなど、この本を持っていればスイスで紛争に巻き込まれても生きていけそう。だけど日本じゃダメだろうな。国民みんながこの本に書いてあるように行動する、また紛争時の社会システムもこの本の通りに動く、という前提がスイスにはある(あった、かな)けど日本にはない。冷戦時にはここまで民間人がすることがシステム化されてまとめられていたんだなあ。すごい。


だって政府が外部の政府によって転覆されたときに、そこからどうやって市民レベルで抵抗するのか、そこまで書いてあるんだもの。レジスタンスの指南書になってる。別に鉄砲を持って戦う、というわけではなく、主として敵側の巧妙なプロパガンダ、策動にどうだまされないか、というものが多い。政府の正統性は国民の支持の有無によるわけで、情報戦によって国民世論を厭戦、和平、などというスイスの政体を変えても戦争よりまし、という方向に転覆できれば侵略者は国民に支持される白馬の王子に変わる。その情報戦にいかに負けないか、ということに多くのページが割かれててなるほどな、と思った。


で、読んだ後にちょっと気になって調べてみた。この本はどのような成り立ちで、今も通用しているのか。福井県安全環境部危機対策・防災課から出ているレポートで、平成16(2004)年10月25日にスイス連邦市民防衛オフィスを訪問してやり取りしたときのものから。



Q6 スイス政府編「民間防衛」(スイス政府編纂の災害時の対処本)について


 日本では,「民間防衛(スイス政府編)」という本が最近復刊されたが,この本は現在でもスイス国内で使用されているのか。また,改訂の予定は。


 →A6 1980年代までの冷戦に基づいた本であり,現在では使われることは全くない。スイスにとっては過去のものであり改訂する予定はないが,もし日本で役に立つのであれば良いことだと思う。



そうか、過去の本なんだ。新装版、って書いてあったから加筆されて今もスイスで使われているのかと思ってたけど、さにあらず。確かにこの本の奥付にも1995年3月20日新装版第14刷としかなく、改訂はされていない。新版ではなく装いを替えた新装版、ってだけだ。だからちょっと極端な感じがしたんだな。スイスはもうこの本の内容全ては必要としないだろう。だってこんな全面核戦争が起こって政府が転覆される、なんてことは今起こりにくくなっていると思うし。


ま、歴史書的に読んで軍事的な常識をつけるにはよい本です。冷戦時代の戦争にはこういう備えをしておけばよかったんだって。また一般的な戦争において我々非戦闘員はどう立ち振る舞うべきなのか。そゆことがなんとなくわかります。しかし今軍服を着た正規軍同士が交戦する戦争ってほとんどないよね。片方は非正規軍であることが多いじゃないですか。その場合この本の内容はちょっと?かもだけどね。





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